未来への共創:
地域の中堅・中核企業の挑戦を
後押しする支援プラットフォーム

地域の挑戦を、
日本の新しい地平線に。

地域経済の要、中堅・中核企業を支える
連携ネットワーク。
アドバイザリーやネットワーキングなど、
分野を超えた多様な知見により
地域からの挑戦を後押しし、
日本全体に新たな活力をもたらします。

地域の中堅・中核企業支援
プラットフォーム事業(本事業)について

経済産業省では、地域経済への波及効果が大きく、
高い成長が見込まれる地域経済の牽引役として、
地域未来牽引企業を選定・支援してきました。

令和6年、地域の中堅・中核企業
さらなる成長支援のため、
新規事業展開等を支援する地域・テーマごとの
支援プラットフォームを全国各地に立ち上げます。

具体的には、地域企業の皆様がご参加いただける
地域・テーマ別のプラットフォームを全国に展開し、
セミナ―の実施、支援機関等との
ネットワーキング支援等を行います。

本WEBサイトでは、地域企業の皆様を対象にした
日本各地のプラットフォームの支援プログラムを紹介するほか、
各プラットフォームにて開催される
イベント・セミナー情報を随時掲載します。
地域企業の皆様のプラットフォームへの
ご参加をお待ちしております。


支援プログラムの対象企業
(地域の中堅・中核企業)について

各プラットフォームの支援プログラムの対象となる企業は
地域未来牽引企業のうち、
以下いずれかを満たす企業です。
※みなし大企業を除く
(イベント・セミナーにはその他の企業や支援機関の皆様も
ご参加いただける場合がございます。
詳細は各プラットフォームにお問合せください)

地域未来牽引企業
  1. ①直近3年間のうちいずれかの年度で、年間売上⾼が100億円以上
  2. ②直近3年間のうちいずれかの年度で、従業員数が中小企業基本法に定める常時従業員数(製造業その他: 300 人、卸売業・サービス業: 100 人、小売業: 50 人)を超え、2,000 人以下
  3. ③直近年度の年間売上⾼が70億円以上かつ前年度からの
    売上⾼成⻑率が10%以上

※ みなし⼤企業は以下のいずれかに該当する事業者を指します。

  1. ①同⼀の⼤企業が、株式を1/2以上所有している
  2. ②複数の⼤企業が、株式を2/3以上所有している
  3. ③⼤企業の役員または職員を兼ねている者が、
    役員総数の1/2以上を占めている
  4. ④①〜③に該当する企業が、株式の全てを所有している
    ※孫会社を除く
  5. ⑤①〜③に該当する法⼈の役員⼜は職員を兼ねている者が、
    役員総数の全てを占めている ※孫会社を除く

ここでいう⼤企業とは、常時従業員数が2,000⼈を
超えるものとする。

CONTENTS

正解のない時代をしなやかに生き抜くために。「新聞社」の枠を超えた挑戦を続ける【後編】

地域社会の変化を最前線で捉え、発信を続けてきた北海道新聞社。だが、メディアを取り巻く事業環境の変化は厳しさを増し、既存のビジネスモデルだけで生き残れないことは明白だった。 このままでは存在意義を失ってしまう——。強い危機感のもとスタートした新規事業への挑戦。その傍らにはいつも、伴走支援を行う北海道共創パートナーズの存在があった。試行錯誤を重ねながら複数の新規事業を生み出し、同時に経営の意思決定プロセスの改善にも着手してきた。 2025年からは「北海道新聞社の未来」を描く新たなプロジェクトが始まり、ここでも北海道共創パートナーズが伴走役に。北海道新聞社は「新聞社の枠を超え、挑み続ける未来共創グループへ」という新たなビジョンを掲げ、さらなる挑戦を続けている。 8年間におよぶ伴走支援は、北海道新聞社にどんな変化をもたらしているのか。後編では、これまでの歩みを振り返りながら、中堅企業におけるトランスフォーメーションのあり方に迫る。 厳しい現実と向き合いながら、新たな未来を描く 北海道共創パートナーズによる伴走支援のもと、北海道新聞社はスタートアップ支援、人材マッチングサービス、ふるさと納税支援など、複数の新規事業を立ち上げ、事業領域の拡大を続けてきた。また、社内の意思決定プロセスの改善により、スピード感を持って新たなチャレンジができる環境が整いつつある。 果敢に攻めの姿勢を続ける一方で「危機感はむしろ年々増している」と語るのが、新規事業推進部門を管掌する三浦辰治だ。 「ここまで来たからといって、決して安心できる状況ではありません。だからこそ、これからも挑戦を続けなければならない」 その思いが結実したのが、2025年にスタートした「北海道新聞社の未来」を考えるプロジェクトだ。 このプロジェクトでは、2050年を見据えて北海道新聞社はどうあるべきか、描く未来に向けてどんなアクションをとるべきか、長期的な視点で考え、新たな指針を見出すことを目指した。 2025年11月末の住民基本台帳によると、北海道の人口は499万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には100万人以上が減少し382万人になるとされている。 「あらゆる統計から厳しい現実を突きつけられている今だからこそ、未来に目を向け、どんな未来を切り開いていくべきかを前向きに考えたい」と三浦は話す。 700ページ超におよぶ「2050戦略」 「北海道新聞社の未来」プロジェクトでは若手や中堅社員など会社の未来を担うメンバーの声を反映すべく、はじめに議論の場が開かれた。北海道共創パートナーズが壁打ち相手となり、さまざまな意見が上がった。代表取締役社長の岩崎俊一郎もその場に参加し、その内容に大きな衝撃を受けたという。 「想像のはるか上を行くアグレッシブな意見がたくさん出て、経営層にどう受け止められるのかとドキドキするほどでした(笑)。さらに驚いたのが、経営層がそうした提案に対してGOサインを出したこと。この会社は現在進行形で変わろうとしているのだと実感しました」 岩崎俊一郎|株式会社北海道共創パートナーズ 代表取締役社長 2050年の北海道はどうなっているのか、産業はどう変化するのか、新聞の発行部数や広告収入はどれだけ減るのか、その中で北海道新聞社はどのような役割を果たすべきか——。何度も議論と分析を重ねた末に策定された「2050戦略」は700ページ超におよぶという。岩崎はそこに、北海道新聞社の本気度が表れていると力説する。 「新聞事業で発展してきた会社が、どのようにトランスフォームしていくかを真剣に考えた証が『2050戦略』です。既存事業だけでは補えない部分を新規事業で補完し、その先の成長につなげていくのか、絵空事ではなく本気で考え抜いています」 さらにこの戦略を具体化する形で、今後10年間のKPIを「道新Drive2035」として策定し、あわせて発表したのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)だ。ビジョンとして掲げられたのは、「新聞社の枠を超え、挑み続ける未来共創グループへ」。 「私たち自身、大胆な宣言だと感じていますが、それだけ『変わらねばならない』と大きな危機感を持っているということです。『2050戦略』や『道新Drive2035』のキーワードの一つに『両利きの経営』があります。深化と探索、つまり既存事業と新規事業にバランスよく取り組むという考え方が社内で浸透しつつあります。新規事業もやるし新聞“も”つくっている――。それくらいの意識改革が必要だと感じています」 三浦辰治|株式会社北海道新聞社 常務取締役営業統括本部長、デジタル戦略担当 一方で、「ここで満足してはいけない」と三浦は強調する。 「変わりたいと心から願うなら、自分たちにはない知見を持つ外部の方々と積極的にコミュニケーションを続け、多様な意見を取り入れることが不可欠です。私自身、記者として長年現場に足を運んできた経験から、世間のことを知っているつもりになっていましたが、岩崎さんのように新たな視点をもたらしてくださる方と話していると“井の中の蛙”であることを痛感します」 経営層から社員まで、外部との接点を増やし、部門を越えた議論を活性化させることで、新たな化学反応が生まれる。そのためにも、個人も組織もオープンマインドにしてコラボレーションの可能性を広げていきたいという。 “アンビシャス”を合言葉に新たな挑戦へ 2018年から始まった北海道共創パートナーズによる伴走支援は、新規事業立ち上げ、経営の意思決定プロセスの改善、長期戦略およびMVVの策定と多岐にわたる。なぜここまで幅広い支援を手がけてきたのか。北海道共創パートナーズの思いを聞いた。 「私たちは普段、道内の中小企業を中心にご支援しているのですが、そうした経営者の方に多いのが『圧倒的にリソースが足りない』というお悩みです。 一方、東京でコンサルタントとして活動していた際は、大企業とのお付き合いが多く、『明確な階層構造がある中でスピーディーな意思決定をするのが難しい』というお客様の課題に向き合っていました。 北海道新聞社は、中小企業と大企業の間の中堅企業として、リソース不足と意思決定プロセスの両方に課題を抱えていました。『こうすればうまくいく』という決まりきった型がないからこそ、中堅企業ならではの支援のあり方を考え、柔軟な伴走支援を行うことができているのだと考えています」 現在も新規事業推進に力を入れている北海道新聞社。 2024年に設立したふるさと納税支援を行う株式会社ファーストリープは、社内の新規事業提案制度をきっかけに誕生した。北海道共創パートナーズは、事業化検証の最終段階でのブラッシュアップ期間に伴走する専門家として参画し、提案者に寄り添った。 また、北海道新聞デジタルの姉妹サイトとして立ち上がった、地域に密着した経済情報発信サイト「道新BIZ」もまた、新規事業提案制度を機にスタートした。「提案したのは若手社員の方で、熱量がすさまじかったですね」と岩崎は振り返る。ほかにも現在、水面下で進めている新規事業プロジェクトが複数あるという。 2025年には、これまで新規事業推進を担ってきた「ビジネス開発本部」を「アンビシャス・プロジェクト推進室」に名称変更した。命名したのは三浦本人だ。 「野心さえあればどんなアイデアも大歓迎」という新規事業への前向きな姿勢を示したかったと語る三浦。「せっかくなら面白い名前のほうがいいじゃないですか」とにこやかに笑う。 正解は与えられるものではなく、自ら導き出すもの 8年間にわたる二人三脚の歩みは、北海道新聞社に何をもたらしたのか。これまでを振り返り、三浦の思いを聞いた。 「自分たちの力だけではできないことがあるのだと、身をもって教えていただきました。決まりきった正解がない時代を生き抜いていくには、実現したい未来に向かって何をどうすればいいのか、一緒に“正解”を考えてくれるパートナーが必要です。 成功も失敗も、挑戦しなければ始まりません。その最初の一歩を踏み出す勇気を北海道共創パートナーズからいただいていますし、これまで積み重ねてきたことの全てが未来へのステップになるという確信があります」 両社の取り組みを振り返る上で欠かせないのが「自前主義からの脱却」だが、一方で外部の企業や人材を活用することに少なからず抵抗感を持つ企業もあるだろう。 実は両社がコミュニケーションを始めた当初、岩崎は北海道新聞社より「コンサルに否定的な社員もいる」と打ち明けられたという。 「安定した事業基盤があり、プロパーや定年まで勤め上げる社員が多い企業は、外部から入ってくる私たちのような存在を警戒することは少なくありません。 ただ、北海道新聞社の皆さんとは、互いにとってどういう付き合い方がいいのか、一緒に模索する中でゆるぎない信頼関係を築けていると感じます。実際に、新規事業立ち上げの伴走支援では、アイデアが形になっていない初期段階から関わるケースもあれば、ファイナンシャルアドバイザーとして参画しているものもあります。 外部の企業や人材に対して、まずは使ってみて、自分たちに合った使い方を見つけられたらいい、それくらいのライトな気持ちでも良いのではないかと感じています」 岩崎の言葉に、三浦がこう続ける。 「新規事業が生まれ、社内の仕組みが改善され、確実に結果が出ていることが当初の不安を払拭してきたのだと思います。何より気軽に相談できる相手がいることがどれだけありがたいかを社内の多くのメンバーが実感していますから」。 中堅企業ならではの支援の形がある 最後に、同じ中堅企業に伝えたいことを尋ねると、「地域の企業が抱える課題に一緒に向き合ってくれる“お隣さん感覚”で付き合えるパートナーをぜひ見つけてほしいですね」と三浦は語る。 一方、北海道新聞社への伴走支援を続けてきた岩崎も、実感を込めて次のように語る。 「中堅企業の支援というのは、正論だけではうまくいきません。ロジックやファクトを整理することはもちろん大切ですが、それ以上に、一緒に悩んで汗をかいて、障壁を取っ払いながら正解を見つけていく姿勢が欠かせないと思います。そういった密度の高い関わりこそが、中堅企業支援の醍醐味ではないでしょうか。 これからも北海道新聞社の未来を共創するパートナーとして伴走支援を続けていきたいと思います」 インタビュー終了後、「実はご相談したい案件があって…」と新規事業に関する相談を始めた三浦。アイデアの内容や提案者の思いを伝える三浦の言葉に岩崎は真摯に耳を傾け、アドバイスを伝えながら話を前に進めていく。両社のフラットな関係性と日頃のコミュニケーションが垣間見えるシーンだった。 伴走する側、される側という関係を超えた「未来を共創するパートナー」。そんな言葉がふさわしい両社が、地方新聞社のトランスフォーメーションの新たなモデルを確立することに期待したい。

カギは「自前主義からの脱却」。北海道新聞社がトランスフォーメーションを図る理由【前編】

深刻な人手不足や産業構造の変化に直面する日本において、中堅・中核企業の成長戦略が問われている。しかし、経営資源に限りがある中堅企業が、既存事業の枠を超えて新規事業に挑戦することは容易ではない。 80年を越える歴史を紡ぎ、道内で圧倒的な知名度と信頼度を誇る北海道新聞社。地域社会の基盤となる報道機関として人々の暮らしを支えてきた一方で、メディアを取り巻く環境は、時代の変化とともに大きく様変わりしている。 新聞事業だけでは生き残ることが難しい時代、いかにビジネスモデルの転換を図り、持続的な成長につなげていけるのか。この問いは、北海道新聞社のみならず、多くの地方新聞社にとって共通の課題といえるだろう。 こうした状況のもと、北海道新聞社は外部企業による伴走支援を受けながら、新規事業立ち上げ、経営の意思決定プロセス改善、さらには長期戦略およびMVV策定など、8年間にわたって大胆なトランスフォーメーションを図ってきた。前編では、取り組みの背景にある思いと試行錯誤の日々に迫る。 激変するメディア業界、問われる新聞社の存在意義 地域社会の変化を最前線で捉え、発信を続けてきた北海道新聞社。1942年の創業以来、地域メディアとして長きにわたり道民から親しまれてきた。 一方、メディア業界を取り巻く環境変化は加速している。 インターネットやSNS、スマートフォンの普及により、報道機関だけでなく個人が発する情報までもが、瞬時に世界中へ拡散される時代が到来した。紙媒体の廃止や電子版への移行が相次ぐ中、新聞の発行部数も減少の一途をたどっている。 1989年、平成の幕開けとともに北海道新聞社に入社し、記者や支社長を経て、現在は新規事業推進部門を管掌する三浦辰治は、こうした時代の変化を次のように語る。 三浦辰治|株式会社北海道新聞社 常務取締役営業統括本部長、デジタル戦略担当 「日本の新聞の発行部数は2001年、広告費はスマートフォンが世に出始めた2007年がピークです。私たちは地方新聞社として長年、地域の情報インフラを担ってきましたが、既存のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなることは明白でした。このままでは存在意義がなくなってしまう、新しいことにチャレンジしなければ——。そんな思いで模索を続けていた時期に、北海道共創パートナーズさんとの出会いがありました」 「餅は餅屋」で自前主義を脱却する 北海道共創パートナーズは、北海道経済の活性化を目的として北洋銀行と日本人材機構の共同出資により2017年に設立。現在は、北洋銀行100%子会社として経営や人材に関するコンサルティング事業を展開し、地域企業の伴走支援を行っている。 代表取締役社長の岩崎俊一郎は、監査法人やコンサルティングファームで大手企業のクライアントを担当した後、北海道共創パートナーズの立ち上げに参画。以来、中小企業や中堅企業など、地域の企業の悩みに寄り添い、課題解決に取り組んできた。 北海道新聞社と北海道共創パートナーズの出会いは2018年5月まで遡る。 同年3月、北海道新聞社の企画室内には「新規事業推進チーム」が設置された。当時の社長である広瀬兼三の肝いりで立ち上がったこの部署は、新規事業推進に特化した組織だったが、社内にノウハウがなく、試行錯誤の日々が続いていたという。 そんな時、当時のチームリーダーが、道内のネットワークを活かして見つけたのが北海道共創パートナーズだった。岩崎の目に、当時の北海道新聞社はどのように映っていたのか。 岩崎俊一郎|株式会社北海道共創パートナーズ 代表取締役社長 「地方新聞社の中でも北海道新聞社は規模が大きく、道内で圧倒的な地位を確立していました。それだけに大企業が陥りがちな自前主義が強いのではと思っていたのですが、『餅は餅屋』と外部のリソースを使うことに柔軟な考えを持っていることが印象的でした」 北海道にスタートアップが生まれ育つ土壌をつくりたい 北海道新聞社からの相談内容は、北海道を拠点にスタートアップの発掘・育成を行う新規事業の立ち上げだった。 当時、同社はテクノロジーを軸に事業創出やスタートアップ支援を行う株式会社デジタルガレージと意気投合し、合弁会社を設立するための話し合いを進めていた。両社のベクトルは合っていたが、合弁契約の内容など検討すべきことは山積みで、その相談相手として、北海道共創パートナーズが選ばれたのだ。 新規事業という未知の領域に足を踏み入れることには、少なからず不安が伴うもの。自分たちの判断は本当に正しいのか、想定すべきリスクは全て洗い出せているか——。北海道共創パートナーズは、北海道新聞社が新規事業に懸ける情熱も不安も真正面から受け止め、伴走役としてサポートに尽力した。 その結果、2018年7月、北海道新聞社とデジタルガレージの合弁により株式会社D2 Garageが誕生。同年には、創業期のスタートアップ支援をするアクセラレータープログラム「Open Network Lab HOKKAIDO(Onlab HOKKAIDO)」がスタートした。教育機関や自治体、企業と連携し、北海道から世界に羽ばたくスタートアップを発掘・育成するエコシステムの構築・運営に取り組んでいる。 Onlab HOKKAIDOでは、北海道発のスタートアップや、北海道での起業、事業展開を検討するチームを対象に、5ヶ月間にわたり各分野のスペシャリストによるメンタリングなどのさまざまな支援を提供している。 2018年の第1期から2025年の第8期までの8年間で、Onlab HOKKAIDOはスタートアップ36社を輩出し、このうち約半数の企業が資金調達に成功。D2 Garageを中心に、北海道で新たな事業の芽が生まれ育っていくための土壌が着々と出来上がっている。 専門家の声を道しるべに、進むべき方向を見極める 新規事業立ち上げの相談をきっかけに、北海道新聞社と北海道共創パートナーズは、文字通りパートナーとして二人三脚の日々をスタートさせた。 自らアイデアを練り、新規事業創出に挑む北海道新聞社のメンバーたち。その一方で、道内での圧倒的な知名度と信頼度の高さから、日々多くの企業から提携話が舞い込み「やるべきか、やらないべきか」の判断に追われていた。 北海道共創パートナーズはこうした案件についても良き相談相手となった。話に乗るならばどんな条件を提示し、どんな形で手を組むのがよいのか、ベストな答えを一緒に導き出していく。 「『この新規事業を一緒にやりませんか』『ぜひ提携を検討いただきたい』と北海道新聞社には毎日さばききれないほどのオファーが届くんです。まさに1000本ノック状態(笑)。あらゆる角度から球が飛んで来るなかで、内容を一つひとつ精査して、前向きに検討すべき案件については一緒に道筋を立てていく。それが我々の役目です」 新規事業のタネを探し求めている状況で、チャンスがやって来るのは喜ばしいことだ。だが、そのチャンスを掴み取るには勇気が必要であり、「やらない」という判断を下すこともまた覚悟がいる。だからといって延々と考え続けていては機を逃す。新規事業の難しさについて三浦はこう話す。 「新聞社という完成されたビジネスモデルを長年続けてきただけに、これまでは『一歩踏み出さなくても大丈夫』という気持ちが少なからずあったと思います。端的に言えば、我々は変わることに臆病になっていた。 なかなか動き出せない私たちにとって、外部の専門家はぐいっと背中を押してくれる存在です。その助言は、自分たちが進むべき方向を見極めるための道しるべとなっています」 経営の意思決定プロセスの再構築 北海道新聞社との“1000本ノック”を続ける中で、岩崎はあることに気が付いた。この会社の意思決定プロセスは時代に合っていないのではないか——。 例えば他社からの提携話を受けるべきか、社内で提案された新規事業のアイデアを推し進めるべきか、経営の意思決定が必要なシーンは数えきれないほどある。 だが新市場への参入やM&Aなど、これまでに経験したことのない要素が含まれていると、リスクを過度に考えるあまり話が前に進まなかったり、検討を重ねすぎて判断のスピードが遅くなったりと、さまざまな課題があると岩崎は感じていた。 その状況が続けば「話を上げてもどうせ通らない」と現場の社員が感じ、新規事業も育ちづらくなってしまう。岩崎は伴走する中で感じ取った障壁と向き合い、それらを一つひとつ取り除いていくことに集中した。 「M&Aの検討に時間がかかるのは、そもそも具体的な戦略がなかったから。それならば判断軸をどこに置くのか、会社としての方針を整理しましょうといった形で、経営陣の皆さんと議論しながら必要なものをつくり、あるいは省ける工程を省き、判断スピードを上げることに取り組みました」 こうして意思決定プロセスを見直し、簡略化や効率化を図る一方で、「M&A会議体」や「新規事業評価会議」など新たな枠組みを設けたという。その狙いを岩崎が解説する。 「経営会議や役員会といった定期的に開かれる会議体とは別に、状況に応じて柔軟に議論の場が持てる仕組みにすることで議論の質やスピードが上がると考えました。すぐに効果が出なくても、まずはやってみることが大切。運用してみて、うまくいかなければまた変えればいいのですから。どの場でどんな議論をして、いつまでに何を決めて動き出すのか。ここ5年ほどで意思決定のプロセスがどんどん洗練され、スピードも上がっているのではと感じています」 加えてスタートしたのが、経営層向けの勉強会だ。社内にノウハウがなく判断が難しい案件については、北海道共創パートナーズが基礎知識や進め方をインプットし、適切な経営判断をサポートしている。三浦はその効果を実感しているという。 「新規事業を始めるには投資が必要ですが、そもそも事業としての将来性はどうか、財務状況とのバランスはどうかなど、経営判断をするにはさまざまな材料が必要です。それらの情報を集めてどう整理して意思決定につなげていくのか、思考の枠組みを教えていただき非常に勉強になっています」 守りから攻めへ転じて生まれた社内の変化 “新規事業初心者”として、北海道共創パートナーズの伴走支援のもと一歩ずつ前に進んできた北海道新聞社。社内で起きている変化について、三浦は確かな手応えを感じている。 「『既存の枠組みから外れてはならない』という守りの姿勢から、『世の中の発展や課題解決に貢献するためにできることはどんどんやろう』と攻めの姿勢に変わってきました。やるかやらないかは後でいいから、まずは情報を集めてみよう、可能性を考えてみようとフットワークが軽くなったように思います」 こうした意識の変化は、成果としても表れている。2018年のD2 Garageの設立に続き、2021年には企業と人材をつなぐマッチングサービスを運営する道新インタラクティブ株式会社、2024年にはふるさと納税支援を行う株式会社ファーストリープを設立するなど、北海道新聞社は着々と新規事業にチャレンジし事業領域の拡大を続けている。いずれも北海道共創パートナーズが携わり、そのサポートが大きな推進力となっている。 伴走支援が始まってから現在までに8年の月日が流れ、そのパートナーシップはより強固なものに。良好な関係のもと、2025年に新たに取り組んだのが「北海道新聞社の未来」を描く一大プロジェクトだ。 後編では、両社の新たな挑戦とこれまでの軌跡を振り返る。

外部専門家のアドバイスが突破口に。「なぜ」を問い続け、新規事業の成功確度を高める【後編】

三島市を拠点に地方ゼネコンとして建設業に従事する一方、事業の多角化を続けてきた加和太建設。2024年6月には「グリーンテック事業準備室」を立ち上げ、環境という未知なる分野での新規事業創出へのチャレンジを始めた。 代表取締役社長の河田亮一は、ベテラン社員であり土木のプロである天野謙一郎を立ち上げメンバーとして指名。天野は地道に情報収集を重ね、慣れないアイデア出しに挑むも、なかなか前に進まない状況に焦りを感じ始めていた。 そんな天野のサポート役を見つけるべく、河田は中堅・中核企業支援プラットフォームの支援プログラムを利用。そこで、カシオ計算機に35年以上勤務し、新規事業創出に関して豊富な知見を持つ井口敏之とのマッチングが成立し、井口の伴走が始まった。 建設業の枠にとらわれることなく事業の多角化に取り組み、順調に成長を続けてきた地方ゼネコンが、なぜ今新たな領域に挑むのか。後編では、さらなる挑戦の日々を振り返る。 自分たちが取り組む意義はどこにあるのか 2024年10月から井口が伴走するようになり、思考の整理が進むと、天野は混沌期を脱することができた。事業者や行政などステークホルダーへのヒアリングにも熱心に取り組み、当初は複数あったテーマの絞り込みをかけ、「下水汚泥の活用」に着目した。 だが「加和太建設が取り組む意義はどこにあるのか」と社長の河田に問われ、天野は答えに窮した。「何ができるか」だけでは足りない。「なぜやるのか」を説明できなければ、誰もついてきてはくれないのだ。新規事業の難しさを知る井口はこう語る。 「『このアイデア良いかも』と思ったら、本当にそれで良いのかを問い直す必要があります。新規事業を立ち上げて継続していくには経営理念とベクトルが合っている必要がありますし、社内外の人を巻き込めるほどの魅力的なテーマかどうかも重要です。 『なぜやるのか』は遅かれ早かれ問われること。どんな場面でも自信を持って答えられる、北極星のような道しるべがはっきりと見えるまで考え続けなければなりません」 井口敏之|カシオ計算機株式会社で新規事業を担当したのち、現在は中堅・中小企業の新規事業開発を顧問として支援 「なぜ」を繰り返し問い続けるには忍耐力が必要だ。アイデアが浮かんだら、少しでも早く事業化し収益を生み出す「未来」のことを考えたくなる。だがやみくもに走り出しても結果は伴わない。「原点」に立ち返って考え直さなければならないと天野は気づかされた。 「とにかく早くテーマを見つけて事業化し成果を出したいという焦りがありました。これまでは土木の現場で収益を生み出してきただけに、何も生み出せていない状況にジレンマを感じていたのだと思います。けれど井口さんに『事業がある程度大きくなった時になぜやるのかをしっかり説明できないとダメになる』と言われてはっとしました」 アイデアを出しては「なぜ」を問い続ける日々。なぜ今やるのか、なぜその事業者と組むのか、なぜ勝算があると思えるのか――。そうした問いの一つひとつに自分なりの答えを出し、ブラッシュアップを重ねる地道な作業が続いた。 そんな天野の姿を見ていた河田は、当時をこう振り返る。 「毎日苦しそうでしたが、その分大きく成長したのではないでしょうか。私からも井口さんからもあれこれ質問されてうまく答えられなくて、相当きつかったはずです。それでも諦めずに根気強く自分のミッションと向き合ってくれました」 ステークホルダーとの対話が方向転換のヒントに 繰り返し検討を行った結果、「下水汚泥の活用」というテーマはそのままに、取り組み内容を変えることになった。はじめは下水汚泥を堆肥化して再利用することを考えていたが、事業計画を立ててみると採算がとれないことが判明し、仕切り直すことになったのだ。 続いて検討を始めたのが、メタン発酵を使った処理方法。微生物の働きによって下水汚泥を分解するものだが、メタン発酵には多くの種類があり、日本ではまだ実現されていない発酵方法も含めて天野は調査を重ねた。全国のメタン発酵処理施設を訪れて処理が行われている現場を視察すると新たな課題が見え始め、このアイデアも保留となった。 「これだ」というものが見つからない――。再び焦りを感じ始めた天野だが、また新たなアプローチを見出した。きっかけは、ヒアリング先の一つである汚泥処理装置メーカーに、汚泥からガスを抽出する方法があると話を聞いた時のこと。抽出したガスを地域に供給し、人々の暮らしを支えることができれば、意義ある事業になるのでないかと天野は考えた。 さらに下水汚泥からガスを抽出すると、最後には純度の高い炭が残るという。この炭を肥料やゴム製品などの原料として活用できれば、サーキュラーエコノミーへの貢献につながる。行政の担当者に提案したところ「ぜひ頑張ってほしい」と応援の声が届いた。 現在は、下水汚泥活用のために必要なシステム構築や、連携を図る事業者とのコミュニケーションを進めている天野。 「あと一つ、二つくらい壁を越えれば新たなステージに進めるのではないかと期待しています」という河田の言葉に、天野は「またすぐに次の壁が立ちはだかることでしょう。でもいろいろなことを経験して何事も乗り越えられる自信がつきました」と笑顔で語る。 天野謙一郎|加和太建設株式会社 執行役員 「新規事業創出はアップダウンの激しいジェットコースターのようなもの」と井口が言うように、課題を一つ乗り越えたら、また次の課題がやってくる。決して平坦ではない道のりだが、担当者が強い思いを持ち続けること、どんな時も支えてくれる味方がいることは、新規事業創出の大きな原動力となることが分かる。 多様な人のつながりから生まれる相乗効果 加和太建設の挑戦に井口が伴走した半年間を振り返り、河田は手応えを語る。 「新規事業の考え方や『なぜ』と繰り返し問うことの重要性を学ばせてもらいました。『これをやればうまくいくよ』という小手先のアドバイスだったら、天野が自力で壁を乗り越えることはできなかったでしょうし、現在地までたどり着くことはできなかったのではないかと思います。井口さんに伴走いただいて本当によかったです」 さらにグリーンテック事業を担当するメンバーが一人増え、現在は天野を含めて2名体制となり、2026年4月からは3名体制となる予定だ。 新メンバーはいずれも社外の人間。加和太建設がグリーンテック事業に取り組んでいることを知り、アカデミアでの研究活動の実績を活かして「ぜひ一緒にやりたい」と自ら声をあげてくれたという。多様なメンバーと協働することの意義について河田はこう話す。 「グリーンテック事業の立ち上げを外部に発信することで、興味を持った人や一緒に取り組みたい人が来てくれるようになりました。そこで新たな検討が進み、地域資源を活用した小水力発電など、下水汚泥活用とは別の事業の可能性も見えてきています。 また、当初検討していた下水汚泥の堆肥化についても、新しいメンバーが持つアカデミアとのネットワークを活かして進展させられる可能性が出てきました。天野を中心にメンバーの力によって取り組みの幅が大きく広がっています」 河田亮一|加和太建設株式会社 代表取締役社長 「人の多様性によってもたらされる影響は大きい」と井口が続ける。 「新規事業に向いている人材とは、指示を待たずに自ら動く人です。ボートで例えるならエンジンの役割を担う人ですね。さまざまなエンジンを持つ人が集まり、力を合わせることで期待以上の相乗効果が生まれるはずです。 天野さんの役割は、目的地に向かってボートを操縦し、しっかりと前に進むこと。経営の視点を持って稼ぐ力を高め、収益を生み出す循環を回していくことが今後の課題となるでしょう。河田社長という強力な応援団長がいますから安心して挑戦を続けてほしいです」 井口による伴走期間は半年間で終了したが、現在も天野とオンラインでやり取りを重ねているという。「天野さんが自信を持って前に進んでいらっしゃることが伝わってきます。半年間一緒に取り組む中で、異なる考え方や方法論を吸収しながら次へ向かって行く強さを身につけられたのでは。事業化が実現する日を楽しみにしています」。 新規事業には「情熱」と「環境」の両方が必要 グリーンテック事業が収益を生み出すにはまだ時間が必要だが、取り組み開始から1年半で着実にプロジェクトは成長を遂げてきた。ここまで来ることができた要因は何なのか。天野は「突き詰めて考える癖がついたことが大きい」と話す。 「井口さんに支援いただき、新規事業に対する考え方や方向性を定められたことは大きな転機になりました。また、自分が主体となって課題を見つけ、じっくりと考えられる環境を整えてくれた河田社長にも感謝しています」 河田も、天野の成長を実感している。 「天野の粘り強さには本当に驚かされました。自分が言語化できていないことを一つひとつ明らかにする作業は、とてつもなくしんどいと思います。答えがなくても言葉にしようと努力し続けたことが、どんな壁にぶつかっても乗り越える力になっているのではないでしょうか。 また、天野自身が『稼ぎを生み出せていない』というジレンマを抱えながら取り組んでいることも結果としてよかった。情報を集めて研究して満足するのではなく、『事業として成立させなければ』という強い思いがあるからこそ前に進めているのだと思います」 一方で、新規事業創出には大切なことがあると続ける河田。 「やはり時間とお金を出し惜しみしないことですね。天野は全国各地に足を運び、たくさんの人に会って対話を重ねてきました。そのおかげで、一見関係のなさそうな情報やアイデアをつなげて新しい可能性を見出すことができています」 河田の言葉に、井口は大きくうなずいてこう話す。 「新規事業の立ち上げは、経営側の覚悟にかかっていると言っても過言ではないでしょう。なぜ新規事業が必要なのか、根本的な部分がぶれない会社は強いと思います。そして天野さんのように強い意志を持ち、愚直に進む力を持つリーダーがいること、さまざまなアドバイスを取り入れながら視野を広げて柔軟に考えることも大切です。 新規事業創出は『考えた量』が成功確率を上げます。考えている量が多ければ多いほど、誰にも論破されず、どんな厳しい状況でも立ち続け、自走する力がつくからです」 中堅企業の成長で日本を元気に 最後に中堅企業に対してのアドバイスを求めると、河田は迷いのない表情で思いを語る。 「中堅・中核企業が成長していく必要性を、経営者自身が本気で考えてほしい。地域の中では競争が少なく、現状維持でも生き残れるかもしれません。しかし、さらなる成長を求め、新しいことに挑戦する意味を真剣に考えてみてほしいのです。 地域をより良くし、産業構造を変えていかなければ、大きな構造変化の中で立ち行かなくなることは明らかです。志を持って、自分から見える範囲を越えたところに打って出てみることが、経営者にとっても会社にとっても、社員にとっても大きな学びになります。 たとえうまくいかなくても自分たちが何者なのかを振り返り、何が足りないのかを知ることができるのだから、そこからまた新たな挑戦を始めればいい。一人で抱え込まず、さまざまな人の力を借りながら進めていけばいいのではないでしょうか 河田が話す通り、今回の取り組みでは、外部のプロフェッショナル人材の活用がプロジェクトを前進させたことは明らかだ。その当事者である井口は、中堅企業に寄り添うことに大きなやりがいを感じているという。 「さまざまな企業の方と話をする中で、皆さん同じような悩みを抱えていることが分かります。多様な知識を持ち、失敗や成功を経験してきた人材が活用される場が広がれば、人の循環が生まれ、日本全体の成長につながっていくのではと期待します。企業の皆さんにはぜひ積極的に外部の知見を取り入れ、新しい成長ストーリーを描いてほしいと願っています」

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