未来への共創:
地域の中堅・中核企業の挑戦を
後押しする支援プラットフォーム

地域の挑戦を、
日本の新しい地平線に。

地域経済の要、中堅・中核企業を支える
連携ネットワーク。
アドバイザリーやネットワーキングなど、
分野を超えた多様な知見により
地域からの挑戦を後押しし、
日本全体に新たな活力をもたらします。

地域の中堅・中核企業支援
プラットフォーム事業(本事業)について

経済産業省では、地域経済への波及効果が大きく、
高い成長が見込まれる地域経済の牽引役として、
地域未来牽引企業を選定・支援してきました。

令和6年、地域の中堅・中核企業
さらなる成長支援のため、
新規事業展開等を支援する地域・テーマごとの
支援プラットフォームを全国各地に立ち上げます。

具体的には、地域企業の皆様がご参加いただける
地域・テーマ別のプラットフォームを全国に展開し、
セミナ―の実施、支援機関等との
ネットワーキング支援等を行います。

本WEBサイトでは、地域企業の皆様を対象にした
日本各地のプラットフォームの支援プログラムを紹介するほか、
各プラットフォームにて開催される
イベント・セミナー情報を随時掲載します。
地域企業の皆様のプラットフォームへの
ご参加をお待ちしております。


支援プログラムの対象企業
(地域の中堅・中核企業)について

各プラットフォームの支援プログラムの対象となる企業は
地域未来牽引企業のうち、
以下いずれかを満たす企業です。
※みなし大企業を除く
(イベント・セミナーにはその他の企業や支援機関の皆様も
ご参加いただける場合がございます。
詳細は各プラットフォームにお問合せください)

地域未来牽引企業
  1. ①直近3年間のうちいずれかの年度で、年間売上⾼が100億円以上
  2. ②直近3年間のうちいずれかの年度で、従業員数が中小企業基本法に定める常時従業員数(製造業その他: 300 人、卸売業・サービス業: 100 人、小売業: 50 人)を超え、2,000 人以下
  3. ③直近年度の年間売上⾼が70億円以上かつ前年度からの
    売上⾼成⻑率が10%以上

※ みなし⼤企業は以下のいずれかに該当する事業者を指します。

  1. ①同⼀の⼤企業が、株式を1/2以上所有している
  2. ②複数の⼤企業が、株式を2/3以上所有している
  3. ③⼤企業の役員または職員を兼ねている者が、
    役員総数の1/2以上を占めている
  4. ④①〜③に該当する企業が、株式の全てを所有している
    ※孫会社を除く
  5. ⑤①〜③に該当する法⼈の役員⼜は職員を兼ねている者が、
    役員総数の全てを占めている ※孫会社を除く

ここでいう⼤企業とは、常時従業員数が2,000⼈を
超えるものとする。

CONTENTS

ブランディングを成功させるメソッドとは。
デザインワークショップで設計される企業変革の道筋【後編】

企業変革から「日本最南端の日本酒造り」を目指す、沖縄県・西原町の酒販企業、南島酒販。変革への第一歩として、コンサルティングファームのデロイトトーマツ、クリエイティブカンパニーのスティーブアスタリスクと協働し、自社ブランディングを目的としたワークショップを2025年12月に開催した。2日間に及んだワークショップで、南島酒販にどのような変化が生まれたのか。 3社の出会いからワークショップ実施に至るストーリーを振り返った前編に引き続き、後編では、ワークショップの内容とその反響に着目。ブランディング・ワークショップを主宰してきたエキスパートのメソッドを紐解きながら、参加者・関係者の率直な感想なども交え、コンセプト構築のポイントや、もたらされたインサイト、そして今後の展望までを掘り下げていく。 企業ブランディングに不可欠な「思考のクセ」への気づき 2025年12月、スティーブアスタリスク代表取締役の太田伸志は、初めて南島酒販の社員一同と相対した。場所は沖縄県那覇市、趣豊かなシーサーが出迎える南島酒販のオフィス。初対面で印象的だったのは「家族のような仲の良さ」だったと太田は振り返る。 太田伸志|株式会社スティーブアスタリスク 代表取締役社長 「ワークショップ参加者の構成に悩む企業は多く、マネージャー陣のみ、あるいは経営戦略室や若手だけに絞るケースは少なくありません。今回ほど部門も世代も多様な参加者が集まるのは珍しい。それでいて、みなさん自然に会話も生まれており、全社で一丸となる雰囲気は、すでにある程度できていると感じましたね」 この参加者設定は、南島酒販の代表取締役社長、大岩健太郎にとってもこだわったポイントのひとつであった。 大岩健太郎|南島酒販株式会社 代表取締役社長 「今回のワークショップは、参加者の属性をバラけさせることにトライしました。特定の部門や年代で固めた方が円滑な意見交換が期待できますが、その分、日常の延長になってしまって新鮮さがなく、一過性の盛り上がりで終わってしまう経験が多かったのです。元々、関係性がフラットな企業風土があったこともあり、このトライについてはあまり心配していませんでした」 参加者の属性を分散させた狙いは大きく2つ。1つは、企業変革に全社で取り組む雰囲気をつくっていくこと。もう1つは立場の異なる他者とのコミュニケーションから気づきを得ることだ。後者は、ワークショップにおけるメインテーマでもあり、その意図について太田は次のように語る。 「日本酒造りという新規事業のデモンストレーションとして、企画内容は『新しい商品アイデアを考えるワークショップ』と設定しました。でも何より大事なのは、一度自分の立場を離れ、他者の立場から気づきを得た上でアイデアを考えていくという、いわば『客観を経由して主観を表現する』思考のプロセスにあります。その布石として参加者属性をバラけさせるトライがあり、また企画内容にも相応の工夫を施しました」 初日は他者の立場に立つことを目的に、太田から「正解のない問い」が投げかけられた。お題は「行きつけの定食屋がテレビで紹介されて、突然行列店になってしまった。馴染みの店長にどうすべきか相談された場合、何と答えるか」というもの。 「予約制にすれば並ばずに食べられる」、「儲かっているなら何も変える必要はない」、「常連や従業員が離れていかないようにケアするべき」、次々と意見が出てくる。この時に重要なのは、自分の「思考のクセ」を理解することだと太田は説明する。 「店長、客である自分、自分以外の常連、従業員、あるいはお店のご近所さんや世論など、立場に応じたさまざまな価値観があり、正解はありません。その中で浮かんだファーストアンサーこそが、自分の『思考のクセ』です。 こうした異なる価値観をフラットにテーブルに並べ、自分の思考は何を優先しがちで、他の意見は何を優先した思考なのかを客観的に理解し、優先すべき価値観を整理していく。それこそがブランディングであり、これから取り組もうとしている自社ブランディングの一歩目のプロセスでもあります」 自分の価値観を、「思考のクセ」として相対化する。すると、異なる価値観が自然と視界に入ってくるようになる。このフラットな思考状態こそ、部門や世代を超えてともに企業としての価値観を考えるために必要不可欠なステップというわけだ。 次いで参加者に問われたお題は自社について。自分が大切にしている想いは何か、自社の本質的な強みや魅力は何かを相互に意見交換し、初日のセッションは幕を閉じた。 松浦宏樹|合同会社デロイトトーマツ シニアマネージャー プロジェクトの運営を担当するデロイトトーマツの松浦宏樹は、「参加者の顔色」に着目してワークショップを見守っていたという。 「日本全国の中堅・中核企業に関わる中で、現場で出会う社員の方々の顔色にもさまざまなカラーがあることをいつも感じます。南島酒販の参加者はみな明るくポジティブな表情なのが印象的で、運営側のサポートがまったく必要ないほど活発に意見が飛び交っていました。元来の風通しの良い企業風土に加え、目的達成へのプロセスがクリアに設計されたワークショップ体験であったことが、新規事業への期待感の醸成につながっていったのかもしれません」 ワークショップの成果から見えてきた展望 2日目は、満を持して新商品のアイデア出しが行われた。泡盛の醸造過程でできる「もろみ粕」を絞ってつくられる、クエン酸とアミノ酸が豊富な健康飲料「もろみ酢」を活用したストロング系アルコール飲料など、沖縄ならではのユニークなアイデアで賑わいをみせた。 意見が多く出るのは望ましいことだ。しかし異なるすべての意見を盛り込んでしまうと、かえってコンセプトが曖昧になってしまう。「客観的に主観を整理する」という初日の成果は、豊富に挙がった個々の意見をスムーズにひとつのアイデアへと収斂した2日目の成果へとつながった。 2日間のワークショップは、南島酒販にどのような変化をもたらしたのだろうか。大岩は、「(日本酒醸造にあたって子会社化した)泰石酒造の名前が社内で頻繁に聞こえるようになった」と語る。 「自社ブランドとしてつくる新しい日本酒はどんなお酒になるのかな、どこにどんな値段で売ろうかなという感じで、新規事業が社員一人ひとりの中でより具体的なイメージとして共有され始めています。そうした意識が生まれると、既存事業の顧客と接しているときにも『この人は日本酒は欲しいだろうか』と機を伺えるようになり、販売チャンスを逃さなくなります。この感覚は、既存事業をこなしているだけでは得られないものなのです。 また、利益率の高い他の自社ブランド商品の営業意識も並行して高まるでしょう。そうして新しく利益が生まれれば、新規事業と既存事業の垣根を越えて、社員全体に公平に還元していくことができる。そうした成功体験を共有しながら、企業として成長していけたらと考えています」 2027年夏ごろの新商品販売を見据えたブランディング&マーケティング支援の準備を進めるデロイトトーマツの小島一郎は、大岩の展望に共感しながらも、「このワークショップは第一歩に過ぎません」と襟を正す。 小島一郎|合同会社デロイトトーマツ コンサルタント 「外部支援機関というと、『外から何か言うだけ』といった印象を持たれている中堅・中核企業も少なくないと思います。今回のワークショップのように、内部の“マーケティング責任者”として伴走するコミットを今後も継続していかなければなりません。同時に、当事者としての関わり方こそ、多くの中堅・中核企業さんに求められ支援のあり方ではないかと感じています」 この声に、大岩も同意する。 「正直なところ、“支援”といわれるとどこか他人事に感じてしまう企業も多いとは思います。そもそも、本当に支援が必要なら自ら申し出るはずですからね。私たちのように、『同じ船に乗ってくれるなら大歓迎』というのが中堅企業の本音だと思うし、この支援プロジェクトはそうしたニーズにしっかりと応えられるものになっていると感じます。 実際、その道のエキスパートがまさに同じ船に乗って協働してくれている今回の支援プロジェクトは、外部の力を知る、頼り方を知るという意味でも、とてもいい機会になっています」 大岩の言葉を聞いて、太田は深くうなずきながらこう締めくくった。 「デザインもコンサルも、うちにはいらないよね、関係ないよねと一見思われがちな職域かもしれません。ですが、外部の力の使い方を知ることで一気に業績を伸ばす企業は珍しくありません。今回のような取り組みが認知されていくことで、今回のような未来に繋がる出会いが増えていくと良いなと思います」

現状維持ではなく成長を。
南島酒販が挑む、“日本最南端の日本酒造り”と企業変革【前編】

既存事業は安定しているが、新規事業に踏み出すほどのモチベーションがない。給料は下がっていないものの、差し迫った不満もない――。こうした状況は人口減少に伴う国内市場の縮小を踏まえると成長戦略を描かなければ立ち行かなくなる可能性を孕んでいる。とりわけ、特定の業界・エリアでしっかりと地盤を固めた企業であればあるほど、他人ごとでは済まされないテーマといえるだろう。 沖縄県西原町で酒類の卸売業を営む南島酒販は、1979年の創業以降、泡盛やオリオンビールの販売元として、県内の強固な顧客基盤を築きながら、本土にも着々と販路を拡大してきた中堅企業だ。現在の代表取締役社長は、創業者の二代目にあたる大岩健太郎。2017年から現職に就いた大岩は、新規事業として目下、「日本最南端の日本酒造り」に挑戦している。 日本酒醸造に不利とされる高温多湿の沖縄で、あえて取り組む新プロジェクト。その想いを紐解くと、安定した中堅・中核企業ならではのジレンマが見えてきた。突破口をともに模索し、ブランディング&マーケティング施策でプロジェクトをアクセラレートした、南島酒販と支援機関の協働プログラムの全容を前後編でお届けする。 「変化なき安泰」でいいのか? 2000年ごろから本土への販路開拓を牽引し、南島酒販を「(沖縄の)外から見てきた」大岩健太郎。県内の酒販業界で安定的な顧客シェアを維持し、豊富なラインアップであらゆるオーダーに応えていく「リアクション・ビジネス」が年々高度化する一方で、大岩はかねてよりある疑問を抱えていた。 大岩健太郎|南島酒販株式会社 代表取締役社長 「『来た球を打つ』ことが基本スタンスの卸売業では、ニーズに敏感に反応する力は磨かれていきます。しかしその一方で、『自らボールを投げる』経験が不足しがちです。その結果、自分たちから仕掛ける力やニーズを先読みする力が育ちにくい側面も出てきます。 正直なところ、このままリアクションを続けるだけでも10、20年先まで同じ給料を払っていくことはおそらくできるでしょう。しかし、国家全体で賃上げを目指していこうという今、それでは不十分です。何より、同じことの繰り返しはおもしろくない。毎日、ゲームでいうステージ1-1をクリアするだけでいいのか。そうした感覚は、私だけでなく社員も薄々感じていたと思います」 そんな折、沖縄で唯一日本酒醸造を認可されていた泰石酒造の事業承継の話が舞い込む。老朽化する製造設備の修復・管理が難しく、後継者の不在も相まって事業継続が危ぶまれていたのだ。 泡盛やオリオンビールに加えて、さとうきびを原料にしたラム酒やさまざまなフルーツ割りの台頭、ウイスキーづくりも盛んになるなど、沖縄産のお酒が多様化する中で、日本酒は南島酒販のラインアップに唯一“欠けていた”存在だった。大岩はこれを、企業として成長するチャンスと捉えて手を挙げた。 「元来、日本酒造りは発酵コントロールの難しさから低温環境での醸造がセオリーです。しかし、技術が進化した最新の製造設備を導入できれば、高温多湿の地域でも安定してつくれるようになります。今は原料となる沖縄産米が足りないため、当面は本土から仕入れて補う予定ですが、将来的には100%沖縄産の米でテロワール(気候や風土)を活かした日本酒をつくりたいと考えています」 2024年2月、南島酒販は泰石酒造の子会社化を発表。沖縄産の日本酒造りに確かな可能性を感じる一方で、課題もまた明確だった。 「我々は『自らボールを投げる』のが得意な企業ではありません。新規事業に踏み出したものの、こと販売戦略の策定においては、検討すべき余地は多分に残されていました」 経営戦略の専門人材は「勝手には育たない」 中堅企業が直面するもうひとつの課題、それは専門人材の不足だ。沖縄エリアの中堅・中核企業支援プラットフォームの運営を手がける、デロイトトーマツ シニアマネージャーの松浦宏樹は、中堅企業における専門人材不足の解決策をこのように語る。 松浦宏樹|合同会社デロイトトーマツ シニアマネージャー 「官民連携における支援において、日本全国で100社ほどの中堅・中核企業を支援してきた中で感じるのは、経営戦略を担う専門部署を設置していない企業が少なくないということです。そうしたケースでは、我々のような存在が数ヶ月〜数年単位で伴走しながら、経営戦略部門の存在意義や効果などを体感していただき、ともに実績をつくることが重要だと考えています。 マーケティングや経営企画、ファイナンスといった領域で、現場レベルの実践を通じてスキルやノウハウに触れてもらうことで、専門人材の育成につながります。また、外部の専門人材を一定期間活用した後、そのまま新たな自社の経営人材として迎え入れる選択肢も生まれています」 沖縄産の日本酒づくりを通じて市場への能動的なアプローチを期していた南島酒販と、今回の需要予測・販売戦略策定支援のプラットフォーム事業がマッチしたのは、2025年8月のこと。販売時期を2027年夏ごろに見据えてプロジェクトを開始した両社だったが、新商品のブランディング検討は早々に軌道修正を迫られることになる。 「中小企業はもともと“コンサル嫌い”なんですよ」と大岩が語るように、変化に不慣れな企業と外部支援機関が協働するのは、決して容易ではない。重要なのは、「同じ船に乗る仲間」としてのリレーション構築だった。そこでまず着手したのが、販売戦略に入る前段階としての土台である。社員のマインドセット、いわば「変化に挑戦するための雰囲気づくり」からプロジェクトはスタートした。 南島酒販とはどのような企業で、強みや課題は何なのか。組織の価値観やアイデンティティを再定義し、全社員でビジョンを共創する。支援機関側もまた、「誰に届けるか」を考える前に「何を届けたいのか」をカタチにする企業ブランディングから伴走することで、まずは信頼関係の構築を目指した。 担当コンサルタントとしてアサインされたデロイトトーマツの小島一郎は、南島酒販のさまざまな部門・世代から約30名の社員が参加するワークショップの主宰を担った。また、以降の伴走支援における強力なパートナーとして招聘したのが、クリエイティブカンパニー・スティーブアスタリスク代表取締役の太田伸志である。その起用について、小島は次のように振り返る。 小島一郎|合同会社デロイトトーマツ コンサルタント 「南島酒販のブランディングを考えたときに、すぐに思い浮かんだのがスティーブアスタリスクの太田伸志さんでした。デザインと聞くと、ロゴやパッケージ、映像といったクリエイティブ制作を想起されるかもしれませんが、それだけではありません。目的達成に必要なアウトプットを整理した上でロードマップから設計する、いわばプロジェクト全体のプロセスを“デザイン”することを強みとしています。 とりわけ、太田さんが唎酒師(ききざけし)としても活動されるなどお酒に対する造詣が深く、本件に最適なスペシャリストでした」 「ボールを投げられる」企業になるために求められること 企業ブランディングのワークショップ主催実績も豊富な太田は、企業変革の第一歩として「自分たちを客観的に見直す機会」の重要性を指摘する。 太田伸志|株式会社スティーブアスタリスク 代表取締役社長 「社員は誰しも会社としてのミッションを担っていますが、日々の業務に追われていると、全社的なビジョンが次第に背景化し、自分の立場に偏った主観的な価値観に縛られてしまうケースも少なくありません。ワークショップを通じて、一度自分の立場を離れ、会社全体を見直す機会があれば、他部門や他者の価値観にも関心が湧きやすくなり、相互理解もしやすくなるはずです。こうした『互いの違いを理解した上で、会社としてのミッションに沿って目の前の仕事を整理していく』プロセスこそが、企業ブランディングの第一歩になります」 この言葉に、大岩も深くうなずく。 「顧客に届けたい想いとダイレクトに結びつく個々の主観は非常に大事です。ただ、それぞれの主張をぶつけ合うだけだったり、自己表現が苦手で意見が出にくかったりすると、合意形成はできません。 個々の想いを客観的に整理して、企業としての価値観として見定められれば、それをプロダクトやサービスとしてカタチにできるようになる。『自分の意見を言える組織になる』ためのワークショップになるように、詳細内容を設計しました」 こうして3社が相見え、プロジェクトはいよいよ本格始動する。すぐさまワークショップのコンセプト構想、企画詳細の設計と準備が進み、2025年12月、2日にわたるワークショップが開催された。 企業としての価値観を見定めるためのワークショップ、その内容とは。参加者全員の本音を引き出し、スムーズな合意形成へと導く体験設計をはじめ、当日の模様や社員のリアルな反響など、後編にてプロジェクトの全貌をさらに追う。

正解のない時代をしなやかに生き抜くために。「新聞社」の枠を超えた挑戦を続ける【後編】

地域社会の変化を最前線で捉え、発信を続けてきた北海道新聞社。だが、メディアを取り巻く事業環境の変化は厳しさを増し、既存のビジネスモデルだけで生き残れないことは明白だった。 このままでは存在意義を失ってしまう——。強い危機感のもとスタートした新規事業への挑戦。その傍らにはいつも、伴走支援を行う北海道共創パートナーズの存在があった。試行錯誤を重ねながら複数の新規事業を生み出し、同時に経営の意思決定プロセスの改善にも着手してきた。 2025年からは「北海道新聞社の未来」を描く新たなプロジェクトが始まり、ここでも北海道共創パートナーズが伴走役に。北海道新聞社は「新聞社の枠を超え、挑み続ける未来共創グループへ」という新たなビジョンを掲げ、さらなる挑戦を続けている。 8年間におよぶ伴走支援は、北海道新聞社にどんな変化をもたらしているのか。後編では、これまでの歩みを振り返りながら、中堅企業におけるトランスフォーメーションのあり方に迫る。 厳しい現実と向き合いながら、新たな未来を描く 北海道共創パートナーズによる伴走支援のもと、北海道新聞社はスタートアップ支援、人材マッチングサービス、ふるさと納税支援など、複数の新規事業を立ち上げ、事業領域の拡大を続けてきた。また、社内の意思決定プロセスの改善により、スピード感を持って新たなチャレンジができる環境が整いつつある。 果敢に攻めの姿勢を続ける一方で「危機感はむしろ年々増している」と語るのが、新規事業推進部門を管掌する三浦辰治だ。 「ここまで来たからといって、決して安心できる状況ではありません。だからこそ、これからも挑戦を続けなければならない」 その思いが結実したのが、2025年にスタートした「北海道新聞社の未来」を考えるプロジェクトだ。 このプロジェクトでは、2050年を見据えて北海道新聞社はどうあるべきか、描く未来に向けてどんなアクションをとるべきか、長期的な視点で考え、新たな指針を見出すことを目指した。 2025年11月末の住民基本台帳によると、北海道の人口は499万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には100万人以上が減少し382万人になるとされている。 「あらゆる統計から厳しい現実を突きつけられている今だからこそ、未来に目を向け、どんな未来を切り開いていくべきかを前向きに考えたい」と三浦は話す。 700ページ超におよぶ「2050戦略」 「北海道新聞社の未来」プロジェクトでは若手や中堅社員など会社の未来を担うメンバーの声を反映すべく、はじめに議論の場が開かれた。北海道共創パートナーズが壁打ち相手となり、さまざまな意見が上がった。代表取締役社長の岩崎俊一郎もその場に参加し、その内容に大きな衝撃を受けたという。 「想像のはるか上を行くアグレッシブな意見がたくさん出て、経営層にどう受け止められるのかとドキドキするほどでした(笑)。さらに驚いたのが、経営層がそうした提案に対してGOサインを出したこと。この会社は現在進行形で変わろうとしているのだと実感しました」 岩崎俊一郎|株式会社北海道共創パートナーズ 代表取締役社長 2050年の北海道はどうなっているのか、産業はどう変化するのか、新聞の発行部数や広告収入はどれだけ減るのか、その中で北海道新聞社はどのような役割を果たすべきか——。何度も議論と分析を重ねた末に策定された「2050戦略」は700ページ超におよぶという。岩崎はそこに、北海道新聞社の本気度が表れていると力説する。 「新聞事業で発展してきた会社が、どのようにトランスフォームしていくかを真剣に考えた証が『2050戦略』です。既存事業だけでは補えない部分を新規事業で補完し、その先の成長につなげていくのか、絵空事ではなく本気で考え抜いています」 さらにこの戦略を具体化する形で、今後10年間のKPIを「道新Drive2035」として策定し、あわせて発表したのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)だ。ビジョンとして掲げられたのは、「新聞社の枠を超え、挑み続ける未来共創グループへ」。 「私たち自身、大胆な宣言だと感じていますが、それだけ『変わらねばならない』と大きな危機感を持っているということです。『2050戦略』や『道新Drive2035』のキーワードの一つに『両利きの経営』があります。深化と探索、つまり既存事業と新規事業にバランスよく取り組むという考え方が社内で浸透しつつあります。新規事業もやるし新聞“も”つくっている――。それくらいの意識改革が必要だと感じています」 三浦辰治|株式会社北海道新聞社 常務取締役営業統括本部長、デジタル戦略担当 一方で、「ここで満足してはいけない」と三浦は強調する。 「変わりたいと心から願うなら、自分たちにはない知見を持つ外部の方々と積極的にコミュニケーションを続け、多様な意見を取り入れることが不可欠です。私自身、記者として長年現場に足を運んできた経験から、世間のことを知っているつもりになっていましたが、岩崎さんのように新たな視点をもたらしてくださる方と話していると“井の中の蛙”であることを痛感します」 経営層から社員まで、外部との接点を増やし、部門を越えた議論を活性化させることで、新たな化学反応が生まれる。そのためにも、個人も組織もオープンマインドにしてコラボレーションの可能性を広げていきたいという。 “アンビシャス”を合言葉に新たな挑戦へ 2018年から始まった北海道共創パートナーズによる伴走支援は、新規事業立ち上げ、経営の意思決定プロセスの改善、長期戦略およびMVVの策定と多岐にわたる。なぜここまで幅広い支援を手がけてきたのか。北海道共創パートナーズの思いを聞いた。 「私たちは普段、道内の中小企業を中心にご支援しているのですが、そうした経営者の方に多いのが『圧倒的にリソースが足りない』というお悩みです。 一方、東京でコンサルタントとして活動していた際は、大企業とのお付き合いが多く、『明確な階層構造がある中でスピーディーな意思決定をするのが難しい』というお客様の課題に向き合っていました。 北海道新聞社は、中小企業と大企業の間の中堅企業として、リソース不足と意思決定プロセスの両方に課題を抱えていました。『こうすればうまくいく』という決まりきった型がないからこそ、中堅企業ならではの支援のあり方を考え、柔軟な伴走支援を行うことができているのだと考えています」 現在も新規事業推進に力を入れている北海道新聞社。 2024年に設立したふるさと納税支援を行う株式会社ファーストリープは、社内の新規事業提案制度をきっかけに誕生した。北海道共創パートナーズは、事業化検証の最終段階でのブラッシュアップ期間に伴走する専門家として参画し、提案者に寄り添った。 また、北海道新聞デジタルの姉妹サイトとして立ち上がった、地域に密着した経済情報発信サイト「道新BIZ」もまた、新規事業提案制度を機にスタートした。「提案したのは若手社員の方で、熱量がすさまじかったですね」と岩崎は振り返る。ほかにも現在、水面下で進めている新規事業プロジェクトが複数あるという。 2025年には、これまで新規事業推進を担ってきた「ビジネス開発本部」を「アンビシャス・プロジェクト推進室」に名称変更した。命名したのは三浦本人だ。 「野心さえあればどんなアイデアも大歓迎」という新規事業への前向きな姿勢を示したかったと語る三浦。「せっかくなら面白い名前のほうがいいじゃないですか」とにこやかに笑う。 正解は与えられるものではなく、自ら導き出すもの 8年間にわたる二人三脚の歩みは、北海道新聞社に何をもたらしたのか。これまでを振り返り、三浦の思いを聞いた。 「自分たちの力だけではできないことがあるのだと、身をもって教えていただきました。決まりきった正解がない時代を生き抜いていくには、実現したい未来に向かって何をどうすればいいのか、一緒に“正解”を考えてくれるパートナーが必要です。 成功も失敗も、挑戦しなければ始まりません。その最初の一歩を踏み出す勇気を北海道共創パートナーズからいただいていますし、これまで積み重ねてきたことの全てが未来へのステップになるという確信があります」 両社の取り組みを振り返る上で欠かせないのが「自前主義からの脱却」だが、一方で外部の企業や人材を活用することに少なからず抵抗感を持つ企業もあるだろう。 実は両社がコミュニケーションを始めた当初、岩崎は北海道新聞社より「コンサルに否定的な社員もいる」と打ち明けられたという。 「安定した事業基盤があり、プロパーや定年まで勤め上げる社員が多い企業は、外部から入ってくる私たちのような存在を警戒することは少なくありません。 ただ、北海道新聞社の皆さんとは、互いにとってどういう付き合い方がいいのか、一緒に模索する中でゆるぎない信頼関係を築けていると感じます。実際に、新規事業立ち上げの伴走支援では、アイデアが形になっていない初期段階から関わるケースもあれば、ファイナンシャルアドバイザーとして参画しているものもあります。 外部の企業や人材に対して、まずは使ってみて、自分たちに合った使い方を見つけられたらいい、それくらいのライトな気持ちでも良いのではないかと感じています」 岩崎の言葉に、三浦がこう続ける。 「新規事業が生まれ、社内の仕組みが改善され、確実に結果が出ていることが当初の不安を払拭してきたのだと思います。何より気軽に相談できる相手がいることがどれだけありがたいかを社内の多くのメンバーが実感していますから」。 中堅企業ならではの支援の形がある 最後に、同じ中堅企業に伝えたいことを尋ねると、「地域の企業が抱える課題に一緒に向き合ってくれる“お隣さん感覚”で付き合えるパートナーをぜひ見つけてほしいですね」と三浦は語る。 一方、北海道新聞社への伴走支援を続けてきた岩崎も、実感を込めて次のように語る。 「中堅企業の支援というのは、正論だけではうまくいきません。ロジックやファクトを整理することはもちろん大切ですが、それ以上に、一緒に悩んで汗をかいて、障壁を取っ払いながら正解を見つけていく姿勢が欠かせないと思います。そういった密度の高い関わりこそが、中堅企業支援の醍醐味ではないでしょうか。 これからも北海道新聞社の未来を共創するパートナーとして伴走支援を続けていきたいと思います」 インタビュー終了後、「実はご相談したい案件があって…」と新規事業に関する相談を始めた三浦。アイデアの内容や提案者の思いを伝える三浦の言葉に岩崎は真摯に耳を傾け、アドバイスを伝えながら話を前に進めていく。両社のフラットな関係性と日頃のコミュニケーションが垣間見えるシーンだった。 伴走する側、される側という関係を超えた「未来を共創するパートナー」。そんな言葉がふさわしい両社が、地方新聞社のトランスフォーメーションの新たなモデルを確立することに期待したい。

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